近所の女性からのヘッドマッサージ20代の時にインドのジャイプルに滞在していた頃、頭が痛くて寝込んだことがありました。初めのインドでどうすれば良いか途方に暮れていた頃、近所の女性がやってきて、ヘッドマッサージをしてくれました。この時のわたしはアーユルヴェーダのことは知らずに、「頭が痛いのに頭をマッサージするの?頭が痛いから頭は触らないで欲しい」と思いながら、されるがままにマッサージを受けました。頭皮を優しく時に強く、揉み解されるにつれて、いつの間にかすっと頭痛が引いたことが衝撃的でした。この時はじめて、頭が軽くなる感覚を味わいました。20年ほど前のことなのに鮮明に覚えているのは、このヘッドマッサージの経験がよほど印象的だったからだと思います。いろんな頭痛の種類アーユルヴェーダでは、「頭痛」といっても、痛みの種類や原因はさまざまでアーユルヴェーダでは、ヴァータ性頭痛、ピッタ性頭痛、カパ性頭痛なのかを見極めて処方していきます。寝不足、不安、緊張からくる頭痛、目や頭を使いすぎからくる頭痛、寝過ぎによっておこる頭痛、炎天下での活動によっておこる頭痛様々な頭痛がありますが、私がジャイプルに滞在していた時の頭痛は、砂漠地帯に近い土地の暑さで、頭に熱がこもったことによるものだったのでしょう。アーユルヴェーダ のDr.のヘッドマッサージヘッドマッサージに関する強烈な記憶は、あと2つあります。師匠のスワミジのヘッドマッサージと、スワミジのお母さん(アンマ)のヘッドマッサージです。はじめてアシュラムに滞在させていただいた時、アーユルヴェーダの素晴らしさを伝えるひとつとしてスワミジがヘッドマッサージをしてくれました。スワミジは手の指先、手のひら、肘をまげた状態で腕全体を使って、頭、顔全体、首、肩をマッサージしてくれました。顔がクシャクシャになるくらいの強い圧で、顔全体をマッサージされた時は、「これは冗談?変顔になっているだろうな」と一生懸命に笑いをこらえたのを覚えています。失礼なことをしました。頭や顔のマルマ(ツボのような箇所)の存在を知った今は、無数に広がるマルマをまんべんなくカバーした伝統的本物のアーユルヴェーダマッサージだったことがわかります。ヘッドマッサージは、弱った筋繊維に、血液やリンパ液を行き渡らせます。静脈の流れがよくなり老廃物が排出され、痛みや緊張、疲労を取り除きます。頭、首、肩、背中の凝りの軽減、疲れ目の改善、顎の痛みを取り除く、睡眠の質が高まる、集中力が高まる、顔色がよくなるリフトアップするなどなど、ヘッドトリートメントの効能を挙げるとキリがありません。スワミジのヘッドマッサージが終わった後は、頭が活性化して覚醒したような感じになり、とてもすがすがしい気持ちになりました。アンマ(お母さん)のヘッドマッサージ一方、スワミジのお母さんからのヘッドマッサージはとても柔らかで優しいものでした。クシも持たず、髪もとかずに修行に打ち込んでいた私のもつれた髪をほどくように、食用のココナッツオイルを髪の毛に塗りながら、優しく頭をなでてくれたのを覚えています。ただそれだけなのですが、気を張って頑張っていたのか、緊張の糸がほどけてほろっと涙がでました。すっと心が軽くなりました。ヘッドマッサージは、優しく撫でられることで愛情が伝わり、心が癒されるという精神面でも大きな効果があります。私がスワミジのお母さんから頭を触ってもらい、ほろっと涙がでたのは、アンマの大きな愛情や優しさに触れたからだと思いますインドでは、家庭内で親子同士、夫婦同士でおこなうコミュニケーションのひとつとしてヘッドマッサージを行なっています。技術を学ばなくても、見よう見まねで心を込めて触れ、相手を癒します。お猿さんがお互いに毛繕いをするように、大事な者同士が、触れ合うことで、「あなたのこと、大切に想っているからね」というのを、手を通して相手に伝えることができるものです。 もちろんマッサージの技術も大切ですが、一番の基本は、「愛情をもって相手に触れること」なのだと思った瞬間でした。この3人からのそれぞれ全く異なったヘッドマッサージで、アーユルヴェーダにさらに魅了されたように思います。現代人は、五感が集まる頭部が常に稼働していて緊張しがちです。現代人にこそ、ヘッドケアの心地よさをお伝えできればと思っています。